会場に用意されたパソコンに、原子力発電環境整備機構(NUMO)のマスコットキャラクター「グーモ」が“先生役”で登場。なえなのさんがパソコンを操作し、画面に表示されるグーモのメッセージを読み上げながら、三四郎の2人と地層処分を基礎から学び、聴講した若い人たちとともに理解を深めました。NUMO理事長の山口彰も解説に加わりました。
司会 突然ですが……皆さん、電気は使っていますよね。
小宮 もちろん。使ってない人なんています?
司会 今日は、その電気と密接に関係する「高レベル放射性廃棄物」の地層処分について、皆さんと学びたいと思います。
グーモ 高レベル放射性廃棄物とは、「原子力発電で使い終えた燃料をリサイクルした後に残る、量は少ないものの、放射能レベルの高い物質」です。
小宮 原子力発電の燃料って再利用するの?
グーモ 原子力発電の燃料は約95%をリサイクルできますが、残りの約5%はどうしても再利用できません。これが高レベル放射性廃棄物です。強い放射線を出すので、人間の生活から遠ざける必要があります。
なえなの そんな危険なものを出すのなら、原子力発電をやめたらいいんじゃない?
グーモ 代わりの発電方法はどうしますか?
相田 風力とか、太陽光とか。
グーモ それだと天気任せで、安定した発電が期待できません。
相田 火力発電もありますね。
グーモ 日本は火力発電の燃料となる石油や天然ガスなどの「エネルギー資源」が乏しく、ほとんどを輸入に頼っています。戦争など何らかの事情で輸入が途絶えると、大変なことになります。燃料をリサイクルできる原子力発電は、エネルギー資源の乏しい日本にとって必要な電源の一つです。
グーモ ここでクイズです。高レベル放射性廃棄物は地層処分をする前に‟あるもの”に融かして固めます。それは何でしょう?
なえなの 会場の皆さんにお聞きします。分かる人は手を挙げてください!
聴衆A 粘土。
山口 残念。
聴衆B ガラス。
山口 大正解です。
なえなの なぜガラスなんですか?
山口 ガラスは構造が不規則な網目状なので、いろんな粒子を取り込んで閉じ込める特長があるんです。このため、放射性物質を長い間、安定した状態で閉じ込めておくことができます。放射性物質をガラスに閉じ込めたものを「ガラス固化体」といいます。
グーモ ガラス固化体の模型が会場内のどこかにあるよ。
なえなの (会場内を探し回って)あっ、見つけました!
小宮 どんな感じ?
なえなの 私は身長155センチですけど、肩くらいの高さです。
山口 高さ130センチ、重さは500キロちょっとで軽自動車より少し軽いくらいですね。
なえなの 高レベル放射性廃棄物は今どこで保管しているんですか?
グーモ 青森県六ヶ所村と茨城県東海村に一時的に貯蔵管理されているよ。
小宮 地上でそのまま保管し続ければいいのでは。
グーモ 地上だと、地震や津波、台風といった自然災害、戦争やテロ、火災などの影響を受けるリスクがあります。地層処分のほかにこれまで、どんな方法が検討されたでしょう?
小宮 宇宙に飛ばす。
相田 巨大なガレージに保管する。
グーモ 答えは「宇宙に捨てる」「海の底に捨てる」「南極の氷の下に埋める」などです。
山口 宇宙は、仮に打ち上げに失敗したら……ということがあります。海はロンドン条約で、南極も南極条約で禁止されています。みんなの海に廃棄物を捨てるのは海洋環境保全の面からダメだろうという理由、そしてまた南極は世界の財産なので特定の国の目的のために使うのはやめようということで、この3つはいずれも行われていません。
グーモ 地層処分は地下何メートルで行うと思う?
小宮 1000メートルくらい?
相田 1メートルくらいですか?
グーモ 正解は地下300メートル。地下深くの岩盤はぎゅっと詰まって、ほぼ酸素がないので、腐食など物質の変化が起こりにくくなります。
山口 また、深ければいいというわけでもありません。地球は真ん中に向かって温度が上がっていくので、処分に必要な素材に影響が出る恐れがあります。そのため、300メートルくらいが良いコンディションです。
相田 ガラス固化体はそのまま埋めるんですか?
グーモ ガラス固化体は、オーバーパックという金属でできた容器に入れます。埋める際には緩衝材で包みます。この緩衝材は水に触れると吸い込んで膨らむベントナイトという素材を使っていて、地下水の浸入を防ぎます。
小宮 ここまで厳重にしても、何かしらの理由で放射性物質が漏れたりしたら?
山口 300メートルくらいの地下では、地下水は非常にゆっくりとしか流れません。1年間に数ミリぐらい。ぎゅっと詰まった岩盤の隙間を通るので、放射性物質が出てきても、周りにとどまって流れていかないか、流れにくい。
グーモ ここでまたクイズです。ベントナイトは日常の‟あるもの”にも使われています。それは何でしょう?
なえなの コットン。
小宮 スポンジ。
相田 紙おむつ。
山口 いい着眼点です。
なえなの 会場の皆さんにも聞いてみましょう。
聴衆C 猫のトイレの砂。
山口 大正解。猫がおしっこをすると砂が固まって周りに流れていきませんよね。
小宮 地下300メートルは分かったけど。
なえなの どこに埋めるかですよね……。
相田 日本は地震大国だし、ちょっと危なそうな気もする。
グーモ 地震発生時の地下深部の揺れは地表に比べて小さくなります。揺れは地表の3分の1から5分の1程度です。
小宮 でも、そこら辺に勝手に埋めるわけにもいかないな。条件があるのかな?
グーモ 「火山に近い場所」「活断層に近い場所」「経済価値の高い鉱山、鉱物資源に近い場所」などは地層処分ができません。
小宮 どうやって場所を決めるんですか?
グーモ 丁寧な調査で探します。文献調査に2年、概要調査に4年、精密調査に14年と、調査だけで20年近くかけていきます。
相田 火山などが新たに生まれる可能性はないんですか?
山口 火山の分布は過去数百万年の間、ほとんど変化がないんです。実は、火山の活動がない場所も日本に結構たくさんあるんです。
グーモ 地層処分を避けるべき場所は大まかな目安として分かっています。必要なスペースも羽田や関空クラスの空港と同じ程度で、日本列島全体で見ると非常にコンパクトです。
なえなの ここまで分かっているのに、さらに調査に時間がかかるの?
山口 慎重に丁寧に調べます。1つ目に「ここは安全」という場所をしっかりと確認する。2つ目に、そこに住んでいる人たちの想いがあります。「処分場ができて町が良くなった」と喜んでいただきたい。3つ目に、処分場を決めるには法律で手順が定められています。安全な場所を丁寧に地域と共生しながら探していこう、そういう取り組みを行っています。
グーモ なえなのさん、最後にメッセージを。
なえなの 「地層処分」という言葉も、どこかで聞いたような気がするくらいでしたが、重要性、必要性を学べたと思います。みんなの将来にかかわってくることなので、もっと多くの人に知ってもらえたらいいなと思います。
第二部には、事業創造大学院大学客員教授でキャスター・コメンテーターの伊藤聡子さんも加わり、なえなのさん、小宮さん、相田さんと、地層処分を多くの人に知ってもらうためにどうすればいいのか、アイデアを出しながら語り合いました。
小宮 第二部を進行させていただきます。第一部では地層処分について勉強しました。
なえなの 大事なことを教えてもらいました。「いつか、なんとかなるだろう」なんて考えはダメですね。
司会 地層処分がZ世代にどれくらい浸透しているのか、福岡市・天神で聞きました。
20代・大学生(女性)
海に流す開放、海洋処分?
高校2年生(男性)
焼却処分
20代・大学生(女性)
安全に処分(笑)
20代・アパレル関係(男性)
埋め立てとか……
20代・会社員(女性)
エネルギーがあるのが当たり前すぎる環境で生きているので……
20代・会社員(女性)
SNSで情報が流れてきたら関心を持つんじゃないかな
高校3年生(男性)
なえなのさんがTikTokで話していたら見る人がいるのでは
小宮 同世代の意見を聞いてどうですか?
なえなの 0人はびっくりしました。「地層処分」というワードが難しいって思っちゃう。
相田 僕らの世代でも分からない人は結構多いと思う。
伊藤 電気はみんな使っているのだから、みんなに知ってもらえるよう、学校などでも教えてほしいですね。
小宮 話し合いたい最初のテーマは「もっと若い世代に広く知ってもらうには?」です。皆さんのアイデアを発表していきます。
なえなの案 「SNSをもっと活用してみては?」
なえなの 私、何でもTikTokから調べるんです。でも地層処分に関する分かりやすい動画は1個もなくて、そもそもSNSをあまり活用していないのかなって感じました。若い子にはやっぱりSNSだと思う。会場に足を運んで勉強してくれる人もたくさんいますけど、寝転がったまま知りたい人もいっぱいいるんですよ。
小宮 NUMOもSNSによる発信に力を入れていますが、アドバイスはありますか?
なえなの 今、若者に直球で何かを伝えるなら、ショートドラマがいいと思う。
小宮 続いて相田のアイデアです。
相田案「小中学生の社会科見学を活用しよう」
相田 電気のありがたみを社会科見学で学ぶ。
なえなの めっちゃ、ありだと思う。
小宮 お隣の佐賀県には子どもたちが電力のことを学べる施設があるんですよね。
司会 玄海町の玄海エネルギーパークです。
伊藤 小中学生向けとして、学校などでブレーカーを一日落として、電気がない大変さを実感する学習をしてみるのもいいと思います。
司会 国内では現在、北海道の寿都町と神恵内村で文献調査の結果が報告書として取りまとめられています。さらに昨年からは、佐賀県玄海町で文献調査がスタートしています。そこで、調査を受け入れている玄海町長にお話を聞きました。
玄海原子力発電所がある玄海町長の脇山伸太郎です。最終処分場は日本国内に1か所必要だと以前から考えていました。北海道で寿都町と神恵内村が手を挙げてくれましたが、全国の自治体の関心が高まる呼び水になればと思い、私が手を挙げたところです。
表明から1年半経ちますが、私の後に文献調査を受け入れる自治体は出ていません。本日のセミナーにたくさんの方が来てくれたのを本当にありがたく思っています。お友達とエネルギーの話をして地層処分に関心を持っていただければ。若い世代はネットも駆使していると思うので、お話を広げていただければありがたいです。
小宮 地層処分に対して、若い人たちにもっと関心を持ってほしいということでしたが、伊藤さん、海外は動きが違うんですよね?
伊藤 スウェーデンとフィンランドは、すでに処分場の場所が決まっていて、私が行った時はスウェーデンで候補地が2か所に絞られていました。2か所とも「どうぞ、うちに来てください!」という状況で驚きました。うち1か所では、地下の坑道でマラソン大会を開いたり、すごく明るい雰囲気なんです。ロシアに近いこともあって、自前の電力である原子力発電は国民とって不可欠だという認識なんです。だから廃棄物の処分についてもセットで考えているんですね。補助金や新しいビジネスの後押し、立派な道路など、(処分場が)地域の未来にとって前向きに明るく捉えられていて、「こんな感じは日本にはない」と思いました。
司会 実際に足を運んだ学生さんもいます。すでに処分場の候補地が決まったスイスへ視察に行った早稲田佐賀高校の生徒にお話を聞きました。
2年の丸山新奈さんと、青木志穏さんは2025年8月、スイス北部にある地層処分場の候補地を視察しました。
丸山 中学生の頃から最終処分事業の勉強をしていたので、大きなポイントである「場所が決まっている」というのは、どうしてなのか、現地の人はどう考えているのか、もっと知りたいと参加しました。びっくりしたのが、最終処分場の予定地に普通に家があって、住民は最後まで話を聞かされていなかったことです。「えっ!? そんなことがあるんだ」って、「日本ではできない」と思いました。
青木 「上からやる」のは速いという一面はあると思いますが、そこに住んでいる人たちの意見を完全に汲み取れていないところもあるのかな。
最後に、地層処分を「自分ごと」としてどう考えていくのか大切なことを伺いました。
丸山 私たちだけではなく、日本に住んで電気を使っている全世代が考えるべき問題で、皆さんにもっと最終処分事業について知ってもらえたらなと思います。
青木 高レベル放射性廃棄物は発電することによって発生するもので、電気を使うことで地層処分という問題が生じていることを忘れないでほしいです。
小宮 VTRを見てどうでしたか
なえなの 知る機会があればではなく、電気を使っているのなら、みんなが知らないとダメ。義務に近いものだと思った。
相田 2人は知るきっかけがあったんだろうね。きっかけづくりを考えていかないとね。
伊藤 先ほど、スウェーデンとフィンランドの話をしましたが、あちらでは小学生くらいの頃から、エネルギーや国の行方、政治などのテーマについて、授業の中で議論する文化が根付いています。日本の学校でも、自分の国のことを話す機会があればいいなと思います。
小宮 最後のテーマは「身近な人たちに知ってもらう 私たちにできるアクション」。友達、恋人、家族などとちょっと話したり、親から教えてもらったりですね。
なえなの どんなに有名な芸能人でも間に24人挟めば、たどり着けるっていいますよね。
小宮 そうなの?
なえなの 「知り合いの知り合いの……、そのまた知り合いの知り合いはヒカキンさん」みたいな感じ。だから私たちが今日学んだことを誰かに話して24人を介せば、ヒカキンさんも地層処分のことを知るわけです。
相田 コロナ禍の時、芸人や有名人が一発ギャグの数珠つなぎみたいなことをやっていた。地層処分についても、「この人も関心があるんだな」みたいに、つながっていけば。
司会 そろそろ時間が迫ってきました。
なえなの 地層処分についても放射性廃棄物についても、よく知ることができたし、会場に来てくれた皆さんと知識を共有できました。この知識がここから日本全国へ、人を介して広がっていくのがすごく楽しみです。自分もSNSを使いながら、みんなが当たり前に知っているという環境を目指していけたらなと思います。
司会 最後に主催者を代表してNUMO理事長の山口彰から皆様にごあいさつです。
山口 本日は多くの方に熱心に話を聞いていただき、大変ありがとうございます。私たちも勉強になることがたくさんありました。NUMOもしっかりと技術、安全、そして対話、発信に努めていきます。今後も関心を持っていただき、皆さんからもどんどん発信していただければ大変ありがたいと思います。本日はありがとうございました。